インドは国土が広く、資源が豊富で人口が多く、今後の経済成長が期待できる国として注目されている国です。同じように人口が多い中国は2001年末にWTOに加盟し、世界の工場としてだけでなく、世界最大の消費市場としても注目されてきました。
インドも中国と同様に外資を導入し、世界の工場になろうとしています。インドはIT大国というイメージが強いものの、ITスキルは誰もがすぐに習得できるものではないので、10億人を超える人口全体をITだけで豊かにすることは困難です。しかし、製造業の工場で組み立て作業をするようになれば、誰にでもできるようになります。
10億人を超える人口を抱えているので、人々が豊かになれば巨大なマーケットとしての魅力も増すでしょう。
インド株投資におすすめの証券会社
残念ながら、日本の証券会社を通じて直接インド株を購入することはできません。しかし、インド株に投資する方法はいくつかあります。インド株ADR(米国預託証券)や海外ETF(上場投資信託)、投資信託などです。これらの金融商品を通じて、インド株に間接的に投資できます。
海外ETFとは、海外の取引所に上場している投資信託で、米国や中国、インド、ASEAN諸国など、海外の代表的な指数(インデックス)への連動を目指したものです。投資信託でありながら、市場に上場しているため、株式のようにリアルタイムで取引できるというメリットがあります。
特に、投資信託や海外ETFは、インド企業に幅広く分散投資ができるため、おすすめです。ただ、インド株ADRや海外ETFを購入するには、外国株式を取り扱っている以下の証券会社に口座を開く必要があります。
SBI
SBI証券では「インド株ADR・インド株ETF」を購入できます。インド株ADR・インド株ETFは米国の証券取引所に上場しているので、米国株と同じように取引が可能です。米国株の取引手数料は、約定代金の0.45%(税込0.495%)と業界最低水準で、最低手数料は0ドル、上限手数料は20ドル(税込22ドル)です。
楽天証券
楽天証券では、インド株ADR、インド株ETFを取り扱っています。楽天証券は手数料が安く、キャンペーンも豊富です。そして、米国株の取引手数料は、約定代金の0.45%(税込0.495%)と業界最低水準で、最低手数料は0ドル、上限手数料は20ドル(税込22ドル)です。
また、パソコンだけでなくスマートフォンでも見やすい設計で、投資初心者に人気のネット証券です。
マネックス証券
「外国株といえばマネックス証券」と言われるほど、外国株の取り扱いが多いマネックス証券。
外国株は6,000銘柄以上、インドADRはSBI証券より多く取り扱っており、他の証券会社ではほとんど取り扱いのない上場直後の銘柄も取引できるというメリットがあります。マネックス証券の米国株の取引手数料も約定代金の0.45%(税込0.495%)で、最低手数料は0ドル、上限手数料は20ドル(税込22ドル)です。
2023年にインドは世界最多の人口になる可能性も
国連は7月11日、インドの人口が2023年に中国を抜き、世界で最も人口の多い国になるとの人口推計を発表しました。中国とインドは2022年にそれぞれ14億人を超えますが、インドが中国を上回るのは1950年の調査開始以来初めてとなります。
インドの人口は2050年には16億6,800万人となり、中国の13億1,700万人を大きく引き離します。2022年時点でも14億1,200万人で、中国の14億2,600万人に迫る勢いです。出生率の高さに加え、乳幼児死亡率の低下や衛生環境の改善により、インドの平均寿命は延びているのです。
人口の増加は、国内総生産(GDP)の伸びを支える労働力の確保を左右し、歴史的に国力を測る指標の一つとなってきました。インドの人口が増えれば、国際社会での発言力も高まります。インドが世界最大の国になれば、安保理の常任理事国入りを認めるべきという主張が強まる可能性もあるのです。
今後は人口ボーナス期に入るインド
インドは、2020年から「人口ボーナス期」に入っているとみられています。人口ボーナス期とは、人口構造が経済にプラスになる時期で、15歳から64歳の生産年齢人口が、その他年代の人口の2倍以上である時期のことです。
人口ボーナス期は生産年齢人口の割合が高くなるので、豊富な労働力が経済活動を活発にします。さらに、高齢者の割合が低く社会保障費用を抑えられるので、経済が拡大しやすいという特徴があるのです。
イーストスプリン社の調査によると、日本では1965年から2000年までが人口ボーナス期で、この間に株価は約14.2倍に上昇しています。そして、中国では1995年から人口ボーナス期が始まり、2021年5月末までに株価が5.6倍に上昇しています。
今後、インドの株価も人口ボーナス期に合わせ、大きく上昇することが見込まれているのです。
インドの高い経済成長率
インドは高い経済成長率も魅力です。インドの2017年からの経済成長率は、以下の通りです。
2017年 | 6.80% |
2018年 | 6.45% |
2019年 | 3.74% |
2020年 | -6.60% |
2021年 | 8.95% |
出典:IMF
インドの実質GDP(国内総生産)成長率は、感染症拡大の影響などにより2020年に低下しましたが、2021年には大きく回復し、その後も中長期的に高い成長が続くと予想されています。
モディノミクスへの期待
現政権であるモディ政権は、経済重視の姿勢で2014年度に発足しました。そして、高い経済成長を実現しています。
また、省庁のスリム化や内閣の権限強化、政治的意思決定の迅速化など、政治改革も実現。こうしたモディ政権の経済政策は「モディノミクス」と呼ばれ、インフラ整備や規制緩和、税制や法律の整備を進めることで、外資を積極的に導入し、インド経済のグローバル化を積極的に進めているのです。
インドの株式市場
インドには、ボンベイ証券取引所(BSE)とナショナル証券取引所(NSE)の2つの証券取引所があります。BSEは1875年に設立され、1878年に設立された東京証券取引所よりも長い歴史を持っているのです。
そしてNSEは1994年に設立され、米国のNASDAQ証券取引所をモデルとしたコンピューター取引システムを導入しています。また、インドの株式市場は非常に活発で、インドの上場企業数は米国に次いで世界第2位となっています。
インドを代表する株価指数が「SENSEX指数」です。SENSEX指数は、インド最大の証券取引所であるボンベイ証券取引所に上場する銘柄のうち、流動性、売買規模、業種などの面で代表的な30銘柄で構成される時価総額加重型の指数です。
SENSEX指数は2021年9月に史上最高値を更新し、初めて6万円の大台に乗りました。その後、指数はやや下落しましたが、2022年も堅調に推移しています。
インドの注目セクターとおすすめ銘柄
※株価は7月25日時点
IT関連
「インドの産業といえばIT」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。実際、ソフトウェアやハードウェアの提供、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)などのIT保守・管理サービスからなるインドのIT産業の市場規模は、2010年以降増加傾向にあります。
欧米をはじめとする海外の企業が、インド企業のサービスを活用する要因は何でしょうか。大きく分けて3つの要因があります。
第1に、人件費などのコストが欧米などの先進国よりも圧倒的に安いこと。2つ目は、時差の関係で、欧米企業が休んでいる間にインド企業が開発作業を進めることができ、これもインド企業の高効率の大きな要因となっています。
第3に、「研究開発への投資」にも力を注いでいる点があげられます。とくに外資系IT企業が多く集積するバンガロールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれ、IT産業のエコシステムが確立されているのです。それでは、IT関連の注目銘柄を紹介します。
インフォシス・テクノロジーズ(INFY)
市場 NYSE
株価 18.56ドル
インフォシス・テクノロジーズは、インドのITコンサルティング・ソフトウェア企業で、30カ国以上の顧客に幅広いエンド・ツー・エンドのビジネスソリューションを展開しています。
そして、グローバル・デリバリー・モデル(GDM)を用いて、設計や開発、保守、管理など、ソフトウェアとプロセス全体にわたって解決策を提供しているのです。
ウィブロ(WIT)
市場 NYSE
株価 5.18ドル
ウィプロは、インドのITサービス事業者です。同社はインドおよび海外で、IT コンサルティング、カスタム・ アプリケーションの設計と開発、ソフトウェアのメンテナンス、データセンターと業務処理アウトソーシングを提供しています。
また、自社製および他社製のコンピューター、ネットワークシステム、セキュリティ製品、ソフトウェアの販売も行っています。
医薬品業界
ITと並んで、インドの産業を代表するのが製薬分野です。日本ではあまり目にする機会がないかもしれませんが、インドにはジェネリック医薬品メーカーとして世界的に認知されている企業が数多くあります。
医薬品販売に関する規制が比較的緩やかなアフリカ諸国などの途上国だけでなく、販売開始までに厳格な承認手続きを必要とする米国などの先進国市場でも高い実績を誇っているのです。
その背景には、IT企業にも共通する、(1)人件費の安さ、(2)高度な技術を持った人材(化学専攻)が豊富であること、などがあります。
また、インドでは、研究から製造までを一貫して行うCRAMS(Contract Research and Manufacturing Services)を強化しています。たとえば米国では、化学合成や製剤など、研究・製造の一部分のみに注力するケースが多く、「一貫した受託」はインド以外の国にはない独自の強みとなっているのです。
ドクターレディー(RDY)
市場 NYSE
株価 54.24ドル
ドクターレディーは、インドの大手製薬会社。主にインド、米国、欧州、ロシアで製品を販売しています。そして、事業内容は、「グローバル・ジェネリック」「医薬品サービスおよび有効成分」「ブランド製品」の3部門からなっているのです。
また、消化器、循環器、小児、皮膚科領域におけるブランドおよびノーブランドの処方薬や、一般用医薬品、医薬品有効成分(API)、中間体(原薬)を製造しています。
個人消費
「所得が増えれば消費も拡大する」というのは新興国全般に共通する傾向ですが、世界最大の人口を抱えるインドは、最もポテンシャルの高い市場です。
現在のインド市場の特徴として、「個人商店の割合がとても高い」ことが挙げられます。逆にチェーンストアなどのいわゆる「組織小売業」の割合が低く、これが「適正な税収管理」や「健全な価格競争」を阻害する要因の一つとなっているのです。
この現状を打開する方策として、インドは「小売業の組織化」を提唱し、たとえば2016年には、インド国内で生産・加工された商品であれば、外国企業が消費者に直接食品を販売できる規制緩和を発表しています。外国企業の参入ハードルが下がることで、現地市場の獲得競争はますます過熱するでしょう。
HDFC銀行(HDB)
市場 NYSE
株価 59.15ドル
HDFC 銀行はインドの民間銀行です。預金口座、ローン、クレジットカード、投資信託、保険商品、投資アドバイス、公共料金の支払い、外貨取引などのほか、ホールセールバンキング、キャッシュマネジメントなどのサービスを提供しています。また、インド国内では、1,171都市で3,000以上の支店とATMを運営しています。
タタ・モーターズ(TTM)
市場 NYSE
株価 28.01ドル
タタ・モーターズは、インドの自動車メーカー。大型、中型、小型の自動車、トラック、乗用車、個人・公共交通用のハイブリッド車、クレーン、ホイールローダーなどの建設機械を設計、製造、販売しています。そして、同社の車両は欧州やアフリカ、中東、東南アジア、南米で販売されています。
ETF(上場投資信託)を利用する
インド株市場全体に投資するには、ETFが便利です。
iシェアーズ S&P BSEセンセックス・インディアETF
株価 4.02ドル
経費率 0.64%
大手資産運用会社であるブラックロックが運用するETFで、SENSEX指数をベンチマークとしています。SENSEX指数はインドの代表的な株価指数で、インドのボンベイ証券取引所に上場している主要企業30社で構成されています。
まとめ
インド株に日本の証券会社から直接投資することはできませんが、ADRやETFを利用して、米国株と同じように取引できます。まずは、米国株口座を開設し、インド株を取引できる環境を整えることをおすすめします。