「豪ドル」は、オーストラリア連邦が発行する通貨です。取引量のシェアは世界第5位で、米ドルやユーロ、日本円、英ポンドに次ぐ取引量をもつ通貨です。
この記事では、豪ドルの概要や変動要因、今後の展望などを解説します。豪ドルの取引を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
豪ドルの現在について
(画像:TradingView)
2022年1月25日時点の豪ドル/円は、81円台半ばです。過去5年間のレートを見ると、64円台から89円台での変動となっています。2020年3月は「新型感染症ショック」の影響により、短期間で大きく変動しました。
豪ドルは比較的取引量が少ない通貨のため、流動性が低く、リスクやリターンが大きい通貨と言えます。
2019年における通貨別取引量のシェアは以下の通りです。
通貨 | シェア |
米ドル | 88.3% |
ユーロ | 32.3% |
日本円 | 16.8% |
英ポンド | 12.8% |
豪ドル | 6.8% |
カナダ・ドル | 5.0% |
スイス・フラン | 5.0% |
人民元 | 4.3% |
香港ドル | 3.5% |
ニュージーランド・ドル | 2.1% |
その他 | 23.1% |
合計 | 200% |
(参照:BIS 世界の為替取引量調査)
豪ドルの取引量は世界で5番目となっていますが、米ドルのシェアと比較すると大きな差があります。 参考までに、米ドル/円のチャートも見てみましょう。
(画像:TradingView)
過去5年間の変動幅は103円台から115円台となっており、豪ドルに比べると安定した値動きとなっています。
豪ドルの変動はどんな時に起こるのか?
オーストラリアは、鉄鉱石や石炭、天然ガスなどの豊富な資源を持つ資源国です。全輸出の5割以上をそれらの資源が占め、そのうち中国への輸出が3割以上を占めています。
(※参照元:外務省 オーストラリア連邦 基礎データ)
そのため、豪ドルは鉄鉱石や金、原油などの商品価格や、中国経済などの影響を受けやすいと言われています。また、RBA(オーストラリア準備銀行)の金融政策、雇用統計やCPI(消費者物価指数)などの経済指標、国際情勢なども豪ドルの変動要因となるでしょう。
一般的な豪ドルの変動要因を以下にまとめます。
上昇要因 | 下落要因 | |
金融政策 | RBAによる金融引き締め観測の高まりなど | RBAによる金融緩和観測の高まりなど |
経済指標 | 雇用統計やCPI(消費者物価指数)などの指標が市場予想を上回る | 雇用統計やCPI(消費者物価指数)などの指標が市場予想を下回る |
国際情勢 | 世界的な景況感の回復など | 世界的な景況感の悪化など |
商品市況 | 鉄鉱石などの商品価格が上昇 | 鉄鉱石などの商品価格が下落 |
これらの変動要因はあくまでも一般的なものであり、相場状況などによっては正反対の動きをする可能性もあります。また、豪ドルが変動する要因は、表に記載した内容以外にも多く存在します。
豪ドルは5年後90円や100円に上昇する可能性はあるのか?
(画像:TradingView)
上記のチャートは1993年から現在までのチャートです。約28年間の変動幅は、下が55円近辺、上は108円近辺までとなっています。
90円台や100円台は過去にも付けている価格のため、今後の状況によっては十分に可能性があるでしょう。
前述の通り、金融政策の見通しや資源価格の動向、さらには新型感染症の感染状況なども今後のレートに影響を与えます。
今後の展望について見ていきましょう。
豪ドルの5年後の見通し
5年後の豪ドル相場は、感染症の影響や金利の動向、資源価格の動向などをもとに考察すると、上昇している可能性が高いと考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
感染症の感染状況
まずは、日本とオーストラリアの感染状況を見ていきましょう。
【人口】
約2,569万人(2020年12月 出典:豪州統計局)
オーストラリアでは、2021年12月末から感染者数が急増し、ピーク時には1日17万人を超えています。オーストラリア政府は、オミクロン株拡大でもロックダウンを行わない方針を維持していますが、経済活動の鈍化は避けられないでしょう。
しかし、オーストラリアではワクチンのブースター接種が急速に進んでおり、人工の約27%(約700万人)の摂取が完了しています。ブースター接種の進捗に伴い、オミクロン株の感染も減少傾向となることが予想されています。
(引用元:Our World in Data)
オミクロン株が終息に向かうことで経済活動が再活性化し、豪ドル相場が見直されるきっかけとなる可能性があります。
金利の動向
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、1月25日から26日にかけて行われた米FOMC(連邦公開市場委員会)の定例会合後の会見にて、「3月会合でFF(フェデラルファンド)金利を引き上げることを意識している」と示しました。
RBA(オーストラリア準備銀行)においても、今後利上げに向けて舵を切る可能性が高いでしょう。なお、日本はマイナス金利政策を継続しています。
【各国の政策金利】
政策金利 | |
アメリカ | 0.25% |
>オーストラリア | 0.10% |
日本 | -0.10% |
豪ドル/円の通貨ペアの場合、オーストラリアと日本の金利差が為替レートにも影響します。たとえば、オーストラリアと日本の金利差が大きくなるほど、一般的に「低金利の日本円を売って高金利の豪ドルを買う」といった動きになりやすいでしょう。
その場合、為替レートは「円安・豪ドル高」となります。
なお、金利先物市場では、2023年以降の利上げが織り込まれています。オーストラリアの政策金利は米国を上回るペースで利上げすると見られており、金利差が拡大する可能性が高いでしょう。
(出所:Bloomberg 2022年1月13日時点)
日本もいずれはマイナス金利政策を終了し、徐々に利上げに踏み切ると予想されますが、まだまだ低金利の状況は継続しそうです。
オーストラリアと日本の金利差は拡大すると見られ、今後の豪ドル/円相場の下支え要因となるでしょう。
資源価格の動向
以下の資料によると、オーストラリアのコモディティ価格(商品価格)と豪ドル相場には乖離が見られ、豪ドルに割安感があると言えます。
(出所:Bloomberg)
2016年あたりまで下落基調にあったコモディティ価格が、現在は大きく値上がりしているのがわかります。その要因の一つとして、脱炭素化などに端を発した「グリーンインフレーション」が挙げられます。
【グリーンインフレーションとは】
グリーンフレーション(Greenflation)とは、脱炭素に向けた環境への配慮を表す”Green=グリーン”と、物価の上昇を意味する”Inflation=インフレーション”を重ね合わせた造語で、気候変動対策に端を発する物価上昇のことを言います。
例えば鉄鋼製品の場合、粗鋼生産量が最も多い国である中国が大幅な減産に舵を切った事で供給が落ち込み価格が上昇した現象や、高炉に比べより環境負荷が少ないとされる電炉に生産がシフトする事によって発生するスクラップ価格の上昇する現象等がグリーンフレーションに相当すると解釈できます。
脱炭素化により、将来的に化石燃料が使われなくなる予定ですが、目先のエネルギー需要は化石燃料に依存せざるを得ません。そのため、資源価格が上昇する「グリーンインフレーション」が起こっています。
グリーンインフレーションによる資源価格の上昇により、長期金利が押し上げられる状況が続くと想定されます。
そのため、豪ドル相場の上昇も十分に考えられるでしょう。
豪ドルで大損しないためには
豪ドルで大損しないためには、ボラティリティ(価格変動)の大きさを把握し、レバレッジ(小さい資金で大きな取引をすること)をかけ過ぎないことが重要です。
国内の金融機関で為替取引を行う場合は、最大25倍までレバレッジをかけられます。たとえば、100万円の現金を担保に入れた場合、2,500万円までの取引が出来るということです。
大きなレバレッジをかけて想定通りにレートが動けば、大きな利益を得られます。しかし、その分リスクが非常に大きくなることを頭に入れておきましょう。
2022年最新見通し:まとめ
豪ドルは、今後も上昇する可能性が高いと言えます。しかし、投資家がリスクを回避する「リスクオフ」の状況が続く場合、安全資産である米国債や日本国債などに資金が流れます。
そうなった場合、豪ドル相場が思うように上昇しない可能性もあるため、注意が必要です。豪ドルを購入する際は、レバレッジをかけ過ぎず、適切なタイミングでエントリーしましょう。