「証券口座は複数開設した方がいいのだろうか?」
「どこの証券会社で口座を開設すればよいかわからない」
投資を始めるために証券会社で口座を開くとき、多くの方が悩むポイントです。
結論をお伝えすると、証券口座はできるだけ複数開設するのがおすすめです。
本記事を読んでいただくと、証券口座を複数開設すると良い理由や複数開設のメリット、デメリットなどがわかります。
証券口座は複数の証券会社で開設するのがおすすめな理由
複数の証券口座を開設すると良い主な理由は、1つの証券口座ではニーズを満たしきれない可能性があるためです。
証券口座を開設する投資家は「日本株に投資したい」「米国株に投資したい」「IPO株投資をしたい」など、複数のニーズを抱えている場合があります。
※IPO株投資とは、証券取引所に新規で上場する前に株を入手し、上場日に売却して利益を狙う投資方法。上場前に入手したときの「公開価格」よりも、上場日についた株価である「初値」のほうが高いと利益を得られる。
証券会社によって商品のラインナップや強みが異なるため、1つの証券口座では複数のニーズを満たしきれないかもしれません。
また証券口座を複数開設するメリットが多い一方でデメリットが少ない点も、おすすめできる理由です。
証券口座の開設は無料であり、管理手数料もかかりません。
いくつ口座を開設してもコストが膨らむ心配がないため、複数の証券会社で口座を開くと良いでしょう。
証券会社の口座の種類
証券会社で開設できる口座は、以下の3種類です。
- 特定口座・源泉徴収あり
- 特定口座・源泉徴収なし
- 一般口座
特定口座とは、証券会社が年間の損益をまとめた「特定口座年間取引報告書」を作成してくれる口座です。
株式や投資信託の取引で利益を得た場合は、利益に対して20.315%の税金が課せられます。
「特定口座・源泉徴収あり」では、証券会社が利益から税金を徴収(源泉徴収)して、代わりに納めてくれます。
「特定口座・源泉徴収なし」は、証券会社による源泉徴収が行われないため、自身で確定申告をして税金を納めなければなりません。
「一般口座」を開設すると、損益や税金の計算、確定申告までのすべてを、投資家自身で行う必要があります。
特定口座は、基本的に1つの金融機関につき1口座しか開設できません。ただし1つの金融機関で、特定口座と一般口座の両方を開設することはできます。
証券口座を複数開設する6つのメリット
証券口座複数開設するメリットは、1つずつ確認していきましょう。
1.証券会社ごとのツールやサービスを活用できる
証券会社によって提供している取引ツールやサービス内容などが異なります。
例えば「楽天証券」で口座を開設すると、投資家から人気のあるトレーディングツール「マーケットスピード2」を無料で利用できます。
また松井証券では、配当の利回りや最低投資金額などの条件から銘柄を検索できる「銘柄スクリーニング」をはじめとした、便利な情報ツールを無料で利用可能です。
各証券会社が強みとしているサービスやツールを、状況に応じて使い分けるために、複数の証券口座を開設する投資家は珍しくありません。
2.購入できる商品の幅が広がる
金融商品には、株式以外にも投資信託やETF、商品(金・銀・プラチナ)など、さまざまな種類があります。
証券会社によって、取り扱っている金融商品の種類や数が異なります。
複数の証券会社で口座を開設していると、ご自身が希望する商品に投資しやすくなるのです。
証券口座を開設する際は、商品のラインナップを確認したうえで、ご自身の希望する商品を取り扱っている証券会社を選ぶと良いでしょう。
3.自分に合った証券会社が見つかりやすくなる
複数の証券会社で口座を開設し、取引ツールやサービスなどを利用することで、ご自身に合った証券会社が見つかりやすくなります。
取引ツールの使いやすさや注文のしやすさは、実際に取引をしてみなければ分かりません。
例えば、証券会社Aは分析ツールが使いやすく、証券会社Bは注文がしやすく、証券会社Cには特にメリットを感じなかったとしましょう
この場合、証券会社Cの口座は利用せずに、証券会社Aの取引ツールを使って分析をし、証券会社Bで取引をすると良いでしょう。
証券会社を選ぶ際は、いくつかの証券口座を開設し、ご自身の投資目的や投資スタイルなどに合ったものを実際に利用して絞るのが有効です。
4.手数料を抑えられる可能性がある
複数の証券会社で口座を開設すると、取引をする際の取引手数料を抑えられる可能性があります。
所定の要件を満たすと、取引手数料が無料となる証券会社があるためです。
例えば、楽天証券とSBI証券は、1日の約定代金合計が100万円以下まで手数料が無料となるプラン・コースを選択できます。
楽天証券とSBI証券の口座を同時に開設すると、1日の約定代金が200万円以内であれば手数料を支払わなくてよくなるのです。
5.取引ができなくなるリスクを軽減できる
ネット証券の場合、サーバーがダウンしたりサイトが重くなったりするなど、トラブルが発生して取引に支障が出るケースがあります。
また可能性としては低いものの、証券会社によっては倒産をすることがあります。
せっかく証券口座を開設しても取引ができないと、機会損失につながりかねません。
複数の証券会社で口座を開いておくと、一つの証券口座でトラブルが発生しても、他の口座で取引が可能です。
6.IPO(新規公開株)の当選確率が上がる
IPO株は、高い確率で利益が出るといわれており、非常に人気です。
そのためIPO株を購入するためには、基本的に証券会社が行う抽選に当選をしなければなりません。
証券口座をひとつしか持っていない場合、 IPO株の抽選には当たりにくいです。またIPO 株を取り扱っていない証券会社もあります。
証券会社によってIPO株の割当数や、抽選方法が異なります。複数の証券会社で口座を開設すると、IPO株に当選しやすくなるのです。
IPO 株にも投資したいと考えている方は、証券口座を開設するときにIPO株の取扱実績を確認したうえで、複数の証券会社と契約すると良いでしょう。
複数の証券口座を開設する際の組み合わせ
ここでは、複数の証券口座を開設する方のおすすめの証券会社を紹介します。
なお、おすすめしている証券会社について詳しく知りたい方は「初心者におすすめのネット証券比較ランキング」も、ぜひご一読ください。
米国株に投資したい
米国株に投資したい場合は、以下の証券会社を組み合わせて口座を開設すると良いでしょう。
おすすめ理由 | ||
マネックス証券 | ・米国株の取扱銘柄数4,000超 | |
DMM株 (DMM.com証券) |
・米国株の取引手数料が無料 | |
SBI証券 | ・米国株の取扱銘柄数が4,200 |
※2021年7月時点
DMM株(DMM.com証券)は、米国株の取引手数料が無料である代わりに取扱銘柄数が少ないです。
米国株の取扱銘柄数が多いマネックス証券やSBI証券と、DMM株(DMM.com証券)の口座を組み合わせることで、取引手数料を抑えつつ幅広い銘柄に投資が可能となります。
ポイントを獲得したい・使いたい
証券会社によっては、特定のポイントを獲得したり投資に使用したりできます。
獲得・利用できるポイント | ||
楽天証券 | ・楽天ポイント | |
SBI証券 | ・Tポイント | |
LINE証券 | ・LINEポイント | |
auカブコム証券 | ・Pontaポイント |
※2021年7月時点
例えば、日常生活で楽天ポイントとLINEポイントを獲得・利用する機会が多い場合、楽天証券とLINE証券で口座を開設すると良いでしょう。
手数料を抑えたい
取引時に支払う取引手数料を抑えたい場合は、口座を開設する証券会社に以下を含めるのが有効です。
おすすめ理由 | ||
楽天証券 | ・1日の約定代金合計100万円まで手数料無料(いちにち定額コース) | |
SBI証券 | ・1日の約定代金100万円まで手数料無料(アクティブプラン) | |
松井証券 | ・1日の約定代金50万円まで手数料無料 |
※2021年7月時点
上記の証券会社すべてで口座を開設すると、1日の約定代金が250万円を超えない限り、取引手数料は発生しなくなります。
IPOを当てたい
IPOの当選確率を上げたい場合は、以下の証券会社で口座を開設するのがおすすめです。
おすすめ理由 | ||
SBI証券 | ・2020年の取扱実績:85社(取扱実績No.1) ・抽選に外れても次回以降に当選しやすくなるポイントを獲得できる |
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マネックス証券 | ・2020年のIPO取扱実績:50社 ・100%抽選 |
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楽天証券 | ・2020年の取扱実績:38社
・100%抽選 |
※2021年7月時点
IPO株投資をした場合は、取扱実績がもっとも多いSBI証券と、マネックス証券や楽天証券を組み合わせるのがおすすめです。
複数の証券口座を開設する2つのデメリット
複数の口座を開設するデメリットを確認していきましょう。
1.管理の難易度が上がる
複数の証券口座を開設した場合、保有資産の全体を把握するためには、それぞれの口座で発生した損失や利益をご自身で合計しなければなりません。
入金する額や投資する金融商品なども、それぞれの証券口座で考えて管理する必要があります。
また開設した口座の数だけ、管理が必要なIDやログインパスワードが増えてしまいます。
IDやログインパスワードは、証券口座ごとに異なるものに設定する必要があるだけでなく、定期的な変更も求められるため、管理に苦労してしまうかもしれません。
2.確定申告が必要となる場合がある
複数の証券会社と契約した場合、損益通算をするときは確定申告が必要です。
損益通算とは、取引で発生した損失を他の証券口座で発生した利益と相殺できる制度です。損益通算をすると利益が減って、税負担を軽減できる可能性があります。
例えば、証券口座Aで20万円の損失、証券口座Bで50万円の利益が発生したとしましょう。
そのままであれば、証券口座Bで発生した利益に対して、101,575円(計算式:50万円×20.315%)の税金が課せられます。
損益通算をすると、証券口座Bの利益が証券口座Aの損失と相殺されて30万円となり、納める税金の額が60,945円(計算式:30万円×20.315%)となります。
「特定口座・源泉徴収あり」を選んでいた場合、証券会社は税金を計算したうえで納税してくれるものの、損益通算まではしてくれません。
損失を利益と相殺して税負担を抑えるためには、確定申告をして損益通算をする必要があります。
確定申告の必要書類と注意点
確定申告で損益通算をするためには、以下の書類を作成したうえで税務署へ提出しなければなりません。
- 確定申告書B
- 申告書第三表(分離課税用)
- 確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 個人番号および本人確認書類(個人番号カード、通知カード+運転免許証など)
申告書類を作成する際は、勤務先が発行する「給与所得の源泉徴収票」や、証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」などが必要です。※原本の提出は不要
ただし区分が異なる所得同士は、損益通算ができない点に注意しましょう。
株式や投資信託、債券の取引で生じた利益は「株式等の譲渡所得」に分類されます。
一方、商品や先物取引、FXなどの取引で生じた利益は「先物取引に係る雑所得」です。
例えば、FXの取引で生じた損失は、株式取引で生じた利益と損益通算できません。
NISA口座は複数開設できない
NISAとは、年間で一定金額までの投資で得た利益が非課税となる制度です。
「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類があり、それぞれ非課税となる投資額や非課税期間などが異なります。
特定口座や一般口座をすでに開設している方でも、NISA口座の開設は可能です。
ただしNISAの口座は、1人につき1口座しか開設できません。
また一般NISAとつみたてNISAは、どちらか1つを選択する必要があります。
なおNISA口座を開設する金融機関は、1年ごとに変更が可能です。
NISAについて詳しく知りたい方は、こちらのページもご確認ください。
まとめ:証券口座は複数の証券会社で開設しよう
複数の証券会社で口座を開設すると、以下の通りさまざまなメリットがあります。
- 証券会社ごとのツールやサービスを活用できる
- 購入できる商品の幅が広がる
- 自分に合った証券会社が見つかりやすくなる
- 手数料を抑えられる可能性がある
- 取引ができなくなるリスクを軽減できる
- IPO(新規公開株)の当選確率が上がる
対して複数の証券口座を開設するデメリットは「管理が複雑になる」「確定申告が必要となる場合がある」など、わずかしかありません。
そのため証券口座を複数開設するリスクは、あまりないといえます。
ただし、NISA口座は1つの金融機関でしか開設できない点には注意が必要です。
各社の強みや特徴を確認し、投資目的に合った証券会社をいくつか選んで口座を開設すると良いでしょう。