純金積立は、少額からコツコツと金に投資できる手法です。
一括で購入するよりもリスクを抑えた運用ができますが、手数料などを考えると投資初心者には金ETFの方が適しています。
この記事では、純金積立の仕組みとメリット・デメリットについて解説します。
金の魅力
金には、以下のような魅力があります。
価値がなくならない
株式や債券、通貨などは、発行する国や企業の信用力によって成り立っているので、発行元の信用リスクがあります。しかし金は誰の負債でもないので信用リスクがなく、世界中で価値が認められています。これまでの歴史上、金が無価値になったことはないのです。
インフレに強い
インフレとは、モノの価値(物価)が上がることです。実物資産である金はモノの代表で、インフレに強いといわれています。また景気が悪化すると、国や企業の信用力が低下するため、株や債券などが売られ、破綻リスクがない金が買われる傾向もあります。
「有事」に金が買われる
テロや戦争など軍事的な有事が起きると経済や政治が混乱し、金融システムも不透明感が高まります。ですから、株や債券などが売られる傾向にあるのです。一方、世界中で通用する金に資産を変える動きが強まります。これを「有事の金」と呼ぶのです。
さらに最近ではリーマンショックのような経済的有事でも、信用リスクのない金を保有する動きが強まっています。
純金積立とは
金に投資する方法のひとつとして、「純金積立」があります。純金積立とは、金を毎月一定額継続して購入することです。純金積立には、以下の2種類があります。
定額積立 | 毎月1,000円、1万円など金額を決めて購入する方法 |
定量積立 | 毎月1グラム、10グラムなど数量を決めて購入する方法 |
純金積立のはじめ方は、サービスを取り扱っている証券会社や地金商に口座を開き、毎月いくら購入するか金額や量を決めて積立設定を行います。
純金積立のメリット
純金積立には、以下の3つのメリットがあります。
ドルコスト平均法によりリスクを抑えられる
毎月同じ金額を購入する定額積立を利用すれば、ドルコスト平均法を利用して金価格が安い時には多くの量を、高い時は少ない量を購入できます。ですから金の購入価格が平均化されるので、一括購入するよりも価格変動リスクを軽減できます。
金の保管が不要
純金積立では金の現物を購入していますが、金現物の管理は運営会社が行なっているので盗難のリスクがなく、自分で銀行の貸金庫に預けるなど面倒な手続きもありません。
金貨や金地金への交換も可能
純金積立で溜まった金を受け取る方法には、主に以下の2つがあります。
金貨との交換
運営会社によっては、金貨と交換することが可能です。
金地金での引き出しや現金での受け取り
金地金そのものを受け取ったり、金を売却して現金を受け取ったりすることも可能です。
純金積立はやめとけ?純金積立のデメリット
純金積立には、以下のようなデメリットもあります。
手数料や年会費が必要
金を自宅で保有すれば、保管料は発生しません。
しかし、純金積立には手数料や年会費が必要です。たとえば、純金積立で有名な田中貴金属 の場合、純金積立手数料が以下のようにかかります(1カ月の積立金額の合計)。
金額 | 手数料 |
3,000~29,000円 | 2.5% |
30,000~49,000円 | 2.0% |
50,000円以上 | 1.5% |
さらに、田中貴金属では保管料はかかりませんが、かかる会社もあります。
リアルタイムでの取引はできない
金価格はリアルタイムで変化しています。金の先物などは取引所が開いている時間帯であればリアルタイムで取引できますが、純金積立では運営会社が発表している小売価格でしか買うことが出来ません。
配当や利息などがない
純金積立に限りませんが、金には利息や配当などがありません。株式では配当金、債券では利息がもらえますが、金にはそういったインカムゲイン(保有しているだけで得られる利益)はないのです。
為替リスクがある
金の価格は、為替の影響も考える必要があります。国際的な金の取引単位は、「トロイオンス」です。1トロイオンスは約31.1035gで、2021年11月10日現在で1トロイオンス=1851.38ドルとなっています。
トロイオンスは米ドルでの取引なので、日本で金を購入する時は為替の影響を考える必要があるのです。円安・ドル高になれば金の価格は上昇しますし、円高・ドル安になれば金の価格は下落します。
倒産リスクに注意
純金積立の金の保管方法には、特定保管と消費寄託の2種類があります。
特定保管の場合は、運営会社の資産と顧客の資産である金をきちんと区別して管理しているので、万一会社が倒産しても、積み立てた金は顧客に返却されるのです。
一方の消費寄託の場合、顧客の資産も運営会社の資産に組み入れて管理されます。消費寄託では購入手数料が比較的安く設定できますが、万一会社が倒産した場合、預けた金が返ってくる保証はありません。
純金積立は、数年~数十年と長期にわたって投資するのが通常です。ですから倒産リスクを考え、取引する会社を慎重に選ぶようにしてください。
純金積立以外の金の投資手法
金に投資する方法として、以下の方法もあります。
金地金
金の棒や板を購入するのが金地金です。グラム単位の投資が可能で、1グラム7,000円前後での購入が可能です。ただ、一定の利益がでると確定申告が必要になります。
金先物
先物取引とは、将来の特定の時期における売買を約束する取引。少額の資金で大きな金額の取引ができるレバレッジ取引を活用し、大きなリターンが期待できます。
また取引所が開いている時間なら、リアルタイムで取引できるというのがメリットです。ただし、レバレッジ取引なので純金積立や金地金よりも損失が大きくなるリスクがあります。金は安全資産としての価値が高いものの、金先物取引はハイリスク・ハイリターンの取引なのです。
金ETF
ETF(上場投資信託)とは特定の指数に連動する運用成果を目指し、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託のことです。証券会社で購入でき、手数料が比較的安いというメリットがあります。
投資初心者には積立投資よりも金ETFがおすすめ
投資初心者には、純金積立よりも金ETFがおすすめです。以下の3つのメリットがあるからです。
リアルタイムに取引できる
金ETFは証券取引所に上場しているので、実際の値動きを見ながら機動的に売買できます。とくに株式取引を行っている人におすすめです。
少額で始められる
金ETFは純金積立と同じように、数千円という少額から始められます。そして価格が上昇したときに売ったり、下落した時に買い増ししたりと、気軽に少額から売買できるという特徴があるのです。
NISA口座を利用すれば税金がかからない
金ETFは、NISAを利用することもできます。通常、株や投資信託などの金融商品を取引した場合、売却して得た利益や受け取った配当金に対して約20%の税金がかかります。しかし NISA 口座を利用すれば、年間120万円までの投資金額に対して非課税枠が設定され、税金がかからないのです。
金ETFも、NISA口座の対象になります。金投資の中で非課税の対象になるのは、金ETFだけです。
利益に対して税金がかからないというのも、大きなメリットになります。
取引コストが安い
金ETFは通常の株式と同じ手数料なので、純金積立よりも低コストで取引できます。
たとえば、ネット証券を利用すれば、1日の売買手数料が100万円まで無料のところもあるのです。ですから短期売買はもちろん、コツコツと金ETFで積立投資も手軽にできます。
金ETFは金現物の裏付けがあるかにも注目
金 ETF にも注意点はあります。最大のポイントは、金現物の裏付けがあるかどうかです。
ETFの発行体が破綻しても、金現物が守られるのは裏付けがある場合のみだからです。金現物の裏付けがない ETF は、発行体の信用リスクが発生するので、価格が急落するリスクがあります。
ですから、金ETFを長期保有する場合は、金の裏付けがあるものがベターなのです。金現物の裏付けがある ETF の場合、現物は保管会社(カストディアン)により厳重に保管されます。ですから、災害や盗難を回避できます。
金への投資は資産の10%程度が目安
守りの資産として金は有効ですが、資産の大部分を金に変えるというのはお勧めしません。金は利子や配当などのインカムゲインがないので、保有しているだけでは何も生み出さないからです。
しかも、好景気の時は金の価格は上がりにくいので、資産に占める金の割合が高ければ高いほど、収益を生みにくくなってしまいます。金は守りの資産なので、資産に占める割合が一定以上にならないようにすべきなのです。金の保有割合としては、資産の10%程度を目安にするようにしてください。
金ETFでの積立投資の方法
金は株式のように値動きが大きく、ベストのタイミングで購入するのはプロでも困難です。ですから購入時期を決め、コツコツと積立投資をしていくべきなのです。金 ETF を利用すれば数千円程度で始められるので、投資初心者でもムリなくチャレンジできます。金 ETF は流動性が高いので、証券取引所が開いている時間ならいつでも売買できます。
金の現物はずっしりと重く、確かに魅力的です。ただまとまった金を保有するには、ある程度の資金が必要になりますし、売買や保管も大変になります。あくまでも投資のひとつの手段として、冷静な目で金投資を行うようにしてください。
金ETFの種類
主な金ETFを紹介します。
1540 純金上場信託(金の果実)
価格:6,300円(2021年11月11日時点)
取引単位:1株
日本国内で上場している金ETF の中で、最大の取引量があります。金の裏付けがあり、国内に貴金属が保管されているという安心感もあります。また現物が欲しい人は、1 kg 単位で金地金を日本国内で交換できるというのも、ほかの 金ETF にはない特徴です。現物は宅配便で受け取ることも可能です。
1328 金価格連動型
価格:5,210円(2021年11月11日時点)
取引単位:10株
2007年に、国内の金ETF第1号として上場されました。ただ金の現物ではなく、ロンドン市場の金価格と似た動きをする債券を組み入れた投資信託を投資対象としています。1グラムあたりの円建て価格で表示されているのでわかりやすいというメリットはありますが、債券の発行体リスクがある点には注意が必要です。
1326 SPDRゴールド・シェア
価格:19,260円(2021年11月11日時点)
取引単位:1株
世界でもっとも活発に取引されている金ETFです。金現物の裏付けがあり、地金は保管会社の地下金庫に保管されています。ですから、万が一の時でも地金は保護されるので安心です。金現物との交換も可能ですが、国内での交換はできません。また、海外で交換するときも10万口からと、個人投資家にはハードルが高くなっています。
金は守りの投資
金は利息がつかないので、それだけでは資産を増やす力はありません。しかし、金融危機や戦争といった、いざという時には実物の強みを発揮し、債券や株などほかの資産の下落をカバーしてくれるのです。つまり、「転ばぬ先の杖」的存在であるともいえるでしょう。
とくに今(2021年時点)は世界的にインフレ懸念が高まっています。日本はなかなかデフレから脱却できていませんが、今後は資源高や円安による物価上昇に加え、増税や年金不安などのリスク要因もあります。
預貯金などで資産を保有していた場合、その価値が大きく目減りしてしまう可能性もあるのです。老後を見据え、長期スタンスで資産形成をする場合、株式といった攻めの資産だけではなく、金のような守りの資産も保有しておくことが大切です。
まとめ
金への投資は主に2つあります。一つは金そのものを買うタイプで、純金積立や金貨、地金などがあります。もう一つは金そのものを買わず、金の価格に連動する有価証券などを買うタイプです。それには金の商品先物や、金ETFがあります。
純金積立は、初心者でも気軽に金投資できるというメリットはありますが、手数料が高いという点が難点です。そして、金 ETF を利用すれば株と同じようにリアルタイムに取引でき、いつでも換金できるという利点があります。
さらに NISA 口座を利用すれば税金がかからないというメリットもあるのです。ですから、金投資をしたい投資初心者の人は、純金積立ではなく金ETFから取引を始めることをお勧めします。ただし、金 ETF も元本が保証されているわけではありません。あくまでも資産の一部で投資するようにしてください。
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