OTCは相対取引のことで、株式では大口注文などで利用するのが一般的です。ただ、CFDを利用すれば、少額での購入も可能です。この記事ではOTCの仕組みと、CFDで株を購入する方法について解説します。
OTCとは
OTCは、「over the counter」の略で、取引所を介さない相対取引のことを指します。数量や価格、決済方法などは、取引当事者間で決定され、大口株式取引など、投資家からの注文を証券会社が相手となる場合に用いられる方法です。
売り手と買い手が多数存在する「取引所形式」の取引では、流動性が活発な銘柄しか取引できません。株式市場では、OTC取引の発展により、中小企業やベンチャー企業が増え、仮想通貨市場でもOTC取引が注目されています。
最近では、海外の取引所における機関投資家向けのOTC取引も多くなっています。
OTC取引の仕組み
OTC 取引とは、売り手と買い手が1対1で行う取引のことで、「店頭取引」や「相対取引」とも呼ばれています。OTC取引は、無料通話やチャットサービスなどを利用して行うことも可能です。
OTCの「over the counter(オーバーザカウンター)」は、インターネットが普及する前に、店舗を構える証券会社を訪れ、窓口で社員と対話しながら注文を出し、売買を行っていた様子を表現したものです。
また、非上場株式の相対取引、公社債の取引、注文型デリバティブ取引、外国為替証拠金取引(FX)、CFD取引などにもCTC取引は利用されています。
OTC取引のメリット
FX(外国為替証拠金)取引は、OTC取引の中で最もポピュラーな取引形態です。取引所を介さずに金融機関のネットワークを通じて取引が行われ、取引所の開始・終了時間に縛られることなく、24時間いつでも取引が可能なのが特徴です。
また、株式やデリバティブを利用した金融商品もOTCで取引できます。
OTC取引は取引所取引よりも規制や条件が緩やかなため、取引量が多くなる傾向があります。
取引所取引は、各取引所が定める規制や条件に従います。一方、OTC取引は当事者間の契約に基づいて行われるため、取引所取引よりも自由度の高い取引が可能だからです。
OTC取引のデメリット
OTCのデメリットは、契約の相手方が債務不履行に陥るリスクが高いことです。このリスクを「カウンター・パーティー・リスク」といいます。
金融市場における取引は、取引所取引とOTC取引の2種類に分けることができます。取引所取引では、買い手と売り手の双方が取引所を通じて取引を行い、各参加者のポジションは毎日値決めされるため、決済リスクは限定的です。
一方、債券やデリバティブなどを、市場を通さずに取引相手と直接取引するOTC取引の場合、約定から決済までの間に取引相手が決済不履行に陥る可能性があるのです。
「カウンター・パーティー・リスク」を管理するには取引のカウンター・パーティーを選ぶことが大切。これは、企業の信用調査を行うのと同じで、取引相手の能力を事前に調査し、十分な能力があると判断された取引相手を取引相手として選定するものです。
その際、経営の健全性、自己資本/負債比率、手元流動性など、さまざまな要素が審査されます。また、ポートフォリオのリスク管理上、カウンター・パーティーの分散も必要です。
債券はほとんどOTC取引
OTC取引では、取引する証券会社によって取引価格が異なる場合があります。日本では、株式取引は主に取引所で行われ、債券取引は店頭で行われることが多くなっています。
これは、株式の場合、新規に発行された株式も過去に発行された株式も同じ株式として扱われるのに対し、債券は同じ国や会社が発行していても、償還期限や金利などの条件がその都度異なり、種類が多すぎて取引所での取引が成立しにくいためです。
また、債券の種類が多すぎて、取引所での取引が困難なのも、理由の1つです。
OTCデリバティブ取引(OTCスワップ型ETF)
OTCデリバティブに投資するETF(上場投資信託)の代表例として、ETFの発行者と金融機関との間で、連動対象となる指数のリターンを交換する「トータルリターンスワップ契約」を締結する運用手法を用いたETFである「OTCスワップ型ETF」が挙げられます。
OTCスワップ型ETFは、対象指数の変動率とETFの1口当たり純資産額の変動率を一致させる運用手法を用いたETFです。OTCスワップ型ETFはトラッキングエラーが発生しない反面、スワップ契約のカウンター・パーティーの信用リスクが存在します。
マネックス証券の米国株店頭取引(OTC)
マネックス証券は、2021年9月21日より米国株の国内店頭取引(OTC)サービスを開始しました。国内店頭取引では、現地の証券取引所に注文を出す「委託取引」とは異なり、マネックス証券が取引相手となります。
これまでマネックス証券では、米国株の委託売買は米国現地の取引時間帯のみでしたが、今回の米国国内店頭取引サービスでは、日本の日中(正午から午後5時)に時差を気にせず米国株の取引が可能です。
マネックス証券が提示する価格で発注した注文は、原則として即時に約定します。開設当初は、NYダウ30種平均の構成銘柄およびETFを中心に30銘柄の取扱いを予定。
銘柄は随時追加・入れ替えを行う予定です。
価格はウェブ画面に表示され、マネックス証券の他のサービスと同じように、インターネットを通じた売買が可能になります。なお、米国株式の国内店頭取引は、大手オンライン証券会社では初めてとなります。
マネックス証券の米国株店頭取引のルールは、以下の通りです。
- 取扱銘柄
- 米国株(個別株・ETF)で、マネックス証券が選定した銘柄
- 取引時間
- 日本時間 12~17時
- 取引形態
- OTC(マネックス証券が相手方)
- 取引通貨
- 米ドル(円決済は不可)
- 取引価格
- 米国市場の終値をベースとした基準価額に、おおむね1.5%(最大5%)のスプレッドを加減して決定
- 売買単位
- 1株から
FXのOTC(店頭取引)
外国為替証拠金取引(FX)には、2つの種類があります。「店頭取引(OTC)」と「取引所取引」です。店頭取引の内容(商品)は、店頭取引を取り扱う業者(金融機関等)により大きく異なります。
また、FX会社によって手数料やサービス、スプレッドに違いがあります。投資家は自分の投資スタイルに合った業者を選べるので、業者間の競争が起こり、手数料が安くなることもあるのです。
デメリットとしては、店頭取引は取引所を介さないため、レートの決定に不確実性があることです。
FXの店頭取引の場合、顧客がFX業者に預ける証拠金は、法令に基づき信託会社や信託銀行に金銭信託することになっています。一方、取引所FXの場合は、取引所に直接預けることになります。
現在、日本における取引所FXは、東京金融取引所の上場商品である「くりっく365」のみです。取引所FXは、顧客が取引参加者であるFX会社を通じて上場商品である「くりっく365」の取引を行うものです。これは、上場株式等の有価証券取引を行う際に、取引参加者の証券会社を通じて取引を行うのと同じです。
CFDのOTC
CFDとは、Contract for Differenceの頭文字をとったもので、「差金決済取引」のことを指します。「差金決済」とは、一言で言えば「差金だけを交換する取引」です。
物理的な受け渡しをせず、反対側の取引で発生した差額で決済することから「差金決済取引(Contract for Difference: CFD)」と呼ばれているのです。広義には、FX取引もCFD取引に含まれます。
投資対象は、株価指数(日本225、米国ダウ30など)、商品(金、原油など)、通貨(ドルユーロなど)、株式など多岐に渡ります。
投資対象は、株価指数(日本225、米国ダウ30、米国NAS100など)、商品(金、原油など)、通貨(ドル円など)、株式など多岐に渡ります。
CFDは、一部の証券会社やFX会社が店頭CFDという形で提供しています。その中でも「くりっく株365」は、取引所が提供する日本初のCFD商品です。
くりっく株365は、いざという時のセーフティネットがしっかりしています。たとえば、くりっく株365の場合、万一業者が破綻した場合でも、投資家から預かった証拠金はすべて取引所に直接預託され、原則的に全額保護されます。
また、投資家から預かった証拠金は、日本投資者保護基金が全額を補償。補償額は一般投資家1人あたり最大1000万円となっています。
取扱銘柄が非常に多いのは、店頭CFDならではの特徴と言えるでしょう。ただ、あまりに銘柄数が多いと銘柄選びに苦労することもあるので、まずは馴染みのある株価指数から始めるのが無難です。そういう意味では、くりっく株365の方が取引を始めやすいのです。
くりっく株365に慣れてから、店頭取引のCFDを始めるのもおすすめです。
個別株CFD取引
株式取引で大きな利益を得るために、信用取引を活用している方もいるでしょう。日本株の場合、信用取引を利用すれば口座資金の約3.3倍までポジションを持てますが、さらにレバレッジをかけることができれば、より高い利益を期待できます。
日本株CFDを利用すれば、最大5倍のレバレッジ取引が可能になります。
株式CFDの魅力は、複数の株で取引できることと、レバレッジをかけることができることです。つまり、株価が1万円以上と高く、個人投資家が手を出しにくいファーストリテイリングやファナックなども、少額の資金で取引できるのです。
また、同じ口座で米国株や欧州株の取引も可能で、ドルへの両替も必要ありません。さらに、日経平均株価やNYダウなどの株価指数や、金、原油なども同じ口座で取引できます。
大型株を中心に取引されている方は、株式CFDを利用することで資金効率を高めることができます。また、100万円以上の取引が必要な値がさ株でも、数万円から投資することが可能です。
それでは、株式CFDを取引できる証券会社を紹介します。
IG証券
IG証券は1974年に設立されたグローバルな金融会社で、本社は英国ロンドンにあり、日本を含む15カ国に拠点を置いています。ロンドン証券取引所に上場しており、全世界で23万人以上のユーザーを抱えている、世界No.1のCFD会社です。
IG証券は、世界で取引されている12,000以上の銘柄のCFDを提供しています。日本株CFDのほか、IT(情報技術)、金融、自動車、医薬品、食品など様々な業界を代表する世界の優良企業に1株から投資できます。
株式CFDでは、実際に原資産を所有することなく、株式の「売り」「買い」を選択することが可能です。株式を保有する必要がないため、株価が上昇したときだけでなく、下落したときにも収益機会を得ることができます。
取引端末もパソコンやスマートフォンだけでなく、タブレット端末の利用も可能です。
PayPay証券
日本株CFDは、東京証券取引所に上場している日本株を取引でき、全48銘柄の中から投資対象銘柄を選べます。
日本株CFDの取引に必要な最低証拠金は10,000円です。最大レバレッジは5倍で、1万円の証拠金で5万円分の銘柄を取引できるのです。日本株CFDは、専用アプリをダウンロードすることで簡単に取引ができます。
日本株CFDは、実際に株式を売買するわけではありませんが、配当金や分配金に相当する「権利調整額」を受けることができます。これは「買い」から取引を開始した場合のみで、取引利益だけでなく、配当金に相当するインカムゲインも得られるのがメリットです。
まとめ
株式をOTC取引で売買するのは一般的ではないので、「株式CFD」を利用することをおすすめします。1株から取引でき、5倍のレバレッジをかけることができるというメリットがあるからです。CFDを利用すれば、買いだけでなく、売りからも利益を狙えます。
まずは、CFD取引で少額から取引を始めてみてはいかがでしょうか。