少額から不動産投資できる「REIT」に関心を持っている人もいるのではないでしょうか。しかし、REITの価格は大きく動くので、投資初心者にはリスクが高い金融商品です。

この記事ではREITの仕組みと、どのような点に注意しなければいけないのかについて解説します。

REITとは

REITとは「Real Estate Investment Trust」の略で、日本では頭にJAPANの「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれています。J-REITは多くの投資家から集めたお金で、商業施設やオフィスビル、マンションなど複数の不動産を購入し、主にその賃貸収入を投資家に分配する商品です。

そして、J-REITは投資信託の一種ですが、東京証券取引所に上場されています。

J-REITが初めて上場されたのは2001年9月で、2銘柄が上場して時価総額は2500億円でした。そして、20219月時点では62銘柄が上場しており、時価総額は17.11兆円となっています。

REITは証券取引所に上場されているので、株式と同じようにリアルタイムで取引できます。そして、通常の不動産投資では数百万円から数千万円といったまとまった資金が必要になりますが、J-REIT を利用すれば数万円から数十万円で購入できるので、少額で手軽に不動産投資を始めることができるというメリットがあります。

J-REITの種類

J-REITの物件の用途は、以下の6つに分類できます。

オフィス

会社の事務所が入居するオフィスビルなどが対象になります。ただ、オフィスは景気動向を受けやすくなります。

商業施設

商業施設は、郊外型のショッピングセンターなどが中心です。オフィスと比べて賃貸契約期間が長く、景気動向の影響を受けにくいとされています。

物流施設

物流を集約化する施設が対象です。感染症が流行っている中でも需要が伸びています。

住宅

不景気でも家賃は安定していますが、好景気では恩恵が少なくなります。

ホテル

旅館やホテルが対象。新型感染症の流行で大きな影響を受けています。

ヘルスケア施設

介護施設や病院などが対象ですが、J-REITでのシェアは低くなっています。

REITのリスク

REITは少額で不動産投資でき、リアルタイムで取引できるというメリットはありますが、さまざまなリスクを伴います。
また、証券取引所に上場され取引価格が変動し、利回りや元本が保証された金融商品ではありません。

REITには、主に以下のようなリスクがあります。

金利変動リスク

REITは一般の投資家からお金を集めるだけでなく、銀行などの金融機関から借入をして資金調達しています。ですから、金利が上昇すると REIT の収益に影響を及ぼし、分配金や価格が変動するリスクがあるのです。

不動産市場のリスク

REITは不動産の売買市場や賃貸市場、経済情勢などを受けて保有する物件の価格が下がったり、賃料収入が減ったりする可能性があります。その結果、REITの分配金や価格が変動するリスクがあるのです。

災害リスク

REITが保有している物件が地震や火災などの被害を受けた場合、分配金や価格が変動する可能性があります。

倒産リスク

REITを運営している投資法人は、一般の法人と同じように倒産するリスクがあります。倒産リスクが表面化した場合、REIT価格は大きく下落する可能性があるので注意が必要です。

上場廃止リスク

REITは証券取引所に上場していますが、証券取引所が定める上場廃止基準に抵触した場合、上場廃止になるリスクがあります。

REITと不動産投資の違い

ここでは、REITと現物不動産投資との違いについて解説します。

収益性の違い

実物不動産では、物件によって収益が大きく異なります。物件選びのポイントは、立地と物件タイプです。物件を購入しようと考えている地域には、将来どの程度の人口流入が期待できるのか、ライバル物件の家賃相場はどの程度なのかを考える必要があります。また物件タイプには、マンションやアパート、駐車場などがあります。

一方のREITは、自分で物件を選ぶ手間がないものの、どのような物件に投資するかを自分で選ぶことはできません。ただREITには予想分配金利回りがでているので、どの程度の利回りが期待できるかということを、事前に判断できます。

労力とコスト

REITは実際に投資家が不動産を保有するわけではないので、管理やコストを直接負担しているわけではありません。ただ、REITを運営する投資法人が請け負い、投資成果にそれが反映されるのです。

一方の実物不動産投資では、現地に足を運んで物件を決めるほか、登記などの手続きをする必要があります。また物件を取得してからも、入居者募集や掃除、住民同士のトラブルなど、大家として解決しなければならない業務があります。物件の管理や運営を代行してくれる会社に委託するという方法もありますが、そのぶんの費用も考えておく必要があるのです。

ただ、うまく運営できれば、その分収益向上が期待できます。収益の向上が期待できるというのが、実物不動産の面白さであるともいえます。

換金性の違い

換金性や流動性では、一般的に実物不動産の方が低く、REITの方が高くなります。

実物不動産の場合、基本的に買い手と売り手の相対取引になるからです。実物不動産投資では、自分の買いたいタイミングで取引できるわけではありません。また売却する場合でも、不動産会社に保有物件の査定を依頼してから売りに出すので、通常、売却が成立するまで2~3カ月かかります。

一方のREITは証券取引所に上場しているので、株式と同じように取引所が開いている時間帯であれば自由に売買できます。ただし、株式市場全体や経済状況に影響を受けるので、価格変動リスクが大きいという点には注意が必要です。

REITのデメリット

REITのデメリットについても解説します。

REITは元本が保証された金融商品ではない

REITは債券や株式に比べて比較的高い利回りが狙えます。しかし預貯金のように利息や元本が保証されているわけではありません。株式と同じように、大きな損失が出る可能性があるという点には注意が必要です。

公募増資の可能性がある

REITが新たな物件を取得するとき、金融機関からお金を借りるだけでなく、新しく投資口を発行する「公募増資」で株式のように市場からお金を集める場合もあります。新たな物件を取得するということはREITにとってプラス要因ですが、公募増資をすると投資口価格(REITの価格)が下がってしまう可能性があります。

大和証券によると、2021年7~9月のREIT の公募増資による調達額は合計1,954億円と、四半期ベースでは2020年10~12月以来の高水準となりました。しかし、増資を発表したタカラレーベン不動産投資法人やサンケイリアルエステート投資法人などは、公募増資前に比べて投資口価格が下がっています。増資によって投資口価格が下がってしまったのです。

投資初心者にはリスクが高いREIT

REITは、投資初心者にとってリスクの高い金融商品だという理由について解説します。

感染症ショックで東証REIT指数は大きく下落

東京証券取引所に上場しているJ-REIT全銘柄を対象とした指数に「東証REIT指数」があり、日本のREIT市場の動向を把握するのに便利な指数です。ただ、東証REIT指数は2020年3月の感染症ショックで大きく下落しました。

2020年2月は高値2,255.72ポイントをつけていましたが、3月には安値1,138.04まで下落し、ほぼ半分になったのです。これは、日経平均株価の下落率を上回っています。感染症ショックを受けて換金したい機関投資家の売りが出たことが原因です。

REITは換金のしやすさがメリットですが、株式市場全体の影響も受けるので、価格変動が大きくなるというデメリットがあるのです。とくにJ-REITの個別銘柄に材料がなくても、機関投資家の大口売りにより価格が大きく下落するリスクがあります。

国内のREIT市場は上値の重い展開に

国内の REIT市場は上値の重い展開が続いています。利上げ、賃料の下落、不動産価格高騰の3つの原因があるからです。それぞれについて詳しく解説します。

世界的な利上げ観測

米国では11月からテーパリング(量的緩和縮小)の開始が決定されました。テーパリングとは中央銀行が金融緩和状態から抜け出す出口戦略の一つで、量的緩和策による資産買い入れ額を徐々に減らしていくことです。

利上げに関してはまだ決定していませんが、世界的にインフレが進んでいる中で利上げの時期が前倒しされる可能性もあります。世界的にインフレが進む中、米国以外にもイギリスやEU(欧州連合)など、日本を除く先進国で利上げ観測が強まっているのです。

世界的な金利上昇は、REITのような利回り商品からの資金流出につながります。さらに、REITは物件取得の時に投資家から資金を集めるだけでなく、借入なども行なっているので、金利上昇時の負担が重くなるのです。

賃料の下落

国内の不動産市況に対する警戒感も高まっています。オフィス仲介の三鬼商事によると、東京都心5区のオフィス空室率は、9月時点で6.43%と約7年ぶりの高水準 となりました。平均賃料も約3年ぶりの水準まで下落しています。

感染症の感染拡大によって在宅勤務など出社しない働き方が定着し、オフィスビルの需要が減退したからです。さらに感染症の拡大後、通信やIT業界を中心にオフィスの見直しが進んでいます。

たとえば、ヤフーは2021年11月までに都内のオフィスを約4割縮小。NTTコミュニケーションズや富士通も縮小を進めています。また、クボタも都内に分散している拠点を東京本社に集約するとしています。

不動産価格の高騰

オフィスビルの賃料などは下落していますが、物件取得にかかる費用は高止まりしています。国土交通省が公表している公示地価では、東京圏・商業地の平均価格は1995年以来の高水準にあります。この水準で物件を新たに取得しても、REIT の利回り改善にはつながりにくいのです。

少額から投資できる不動産クラウドファンディングとは

少額から不動産投資できる金融商品として、REITのほかに「不動産クラウドファンディング」もあります。不動産クラウドファンディングは、複数の投資家から運用会社が出資を募り、その資金をもとに不動産投資を行う金融商品です。

不動産クラウドファンディングの主なメリットは、以下の2つです。

投資する不動産を選べる

REITでは投資する不動産を選べませんが、不動産クラウドファンディングでは運用する不動産の情報が公開されています。実際にどのような物件に投資するのかを自分の目で確かめることも可能なのです。

対象となる不動産を確認した上で投資できるというのは、不動産クラウドファンディングのメリットのひとつです。

価格変動リスクがない

REITは証券取引所に上場されているので、価格変動リスクがあります。しかし不動産クラウドファンディングは上場していないので、価格変動リスクはありません。

ただし、不動産クラウドファンディングも元本が保証されているわけではありません。まとまった資金を投じるのではなく、あくまでも資産の一部で運用するようにしてください。

不動産クラウドファンディングのデメリット

不動産クラウドファンディングのデメリットについても解説します。

途中解約では手数料が発生する可能性がある

REITは証券取引所が開いている時間ならいつでも売買できますが、不動産クラウドファンディングは途中で解約すると手数料が発生することがあります。

ただ不動産クラウドファンディングの運用期間は2年以内がほとんどで、運用期間が終了すれば配当金と元本が返ってくるのです。ですから、現物不動産投資に比べると流動性は高いといえます。

元本が保証されているわけではない

不動産クラウドファンディングは保有期間中の価格変動リスクはないものの、元本が保証された金融商品ではありません。不動産市況の状況によっては元本割れで返ってくる恐れもあるので注意が必要です。

また投資先の不動産物件を選べますが、不動産の所有者は運営会社になります。不動産に投資すると言っても所有するわけでもなく、実物不動産投資のような節税効果はありません。

まとめ

REITは実物不動産投資に比べ、少額から気軽に投資できます。ただし、証券取引所に上場しているので価格変動があり、価格を見ながら自分で売買をしなければいけません。また株式市場全体の影響を受けるので、投資口価格が大きく下落するリスクもあります。

そういったリスクを承知していればREIT投資してもいいのですが、投資初心者にはなかなか難しいのではないでしょうか。少額から不動産投資をしたい場合、不動産クラウドファンディングを利用するのも手です。しかし、不動産クラウドファンディングも元本が保証されているわけではないので、複数の商品に分散投資するなどリスク管理をきちんとするようにしてください。

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