これからFXを始める方や、始めたばかりの方にとって、気になることの1つが「FXで稼いだ所得は確定申告が必要かどうか」という点ではないでしょうか?
この点を知らずにFXで稼いで、確定申告をしなかったら、のちのち大変な目にあってしまうかもしれません。
そうならないためにも、FXの初心者は、FXの確定申告について、しっかり学んでおきましょう。
今回は、FXに確定申告が必要かどうかということから、確定申告のやり方についてまで、詳しく解説していきます。
FXで稼いだら確定申告は必要?不要?
確定申告が必要かどうかは、給与所得や退職所得を除いた、年間の所得金額によって決まります。
年間の所得金額が一定のラインを超えたら確定申告が必要で、それ以下の場合は、確定申告は必要ありません。
ただし、FXで損失が出た場合は、確定申告をすることでメリットがあります。
このメリットについては、後ほど「FXの損失は確定申告の際にどうなるのか?」のパートで説明します。
FXの確定申告はいくらから必要になるの?
給与所得や退職所得を除いた所得金額で、確定申告が必要になるラインは「20万円」です。
この20万円というのは、所得金額であって、収入金額ではありません。
所得金額は、収入から経費を引いた金額です。
例えば、年間のFXの収入額が21万円だったとしても、経費が2万円かかっているのなら、所得金額は19万円になるので、確定申告の必要はありません。
FXでは、売買手数料や振込手数料のほか、勉強のための書籍代やセミナー代なども経費として認められます。
FXで稼いで確定申告をしなかったらばれる?
FXで稼いだにもかかわらず、確定申告をしないのは脱税です。
さらに、FXで脱税を試みても、以下の理由から、税務署にばれる確率は非常に高いと言えます。
★ FX会社は、顧客の取引データを税務署に報告している★
★ 顧客のデータがマイナンバーカードと紐付けられている★
上記の理由から、税務署では、FXトレーダーの申告の有無を把握できます。
無申告が発覚した場合、通常納める税金に加え、「無申告加算税」や「延滞税」「重加算税」などの税金が課せられます。
つまり、かえって余計に税金を納めることになってしまうのです。
そうならないためにも、確定申告は必ず行うようにしましょう。
FXの確定申告はいつからいつまでの期間分をいつ出すのか?
確定申告では、1月1日から12月31日までの分を、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告します。
3月15日が土日の場合は、翌月曜日が申告期限です。
なお、2020年分の確定申告は、緊急事態宣言と時期がかぶったことにより、2021年4月15日までに延長されました。
FXの確定申告のやり方
FXの確定申告のやり方は、大まかに以下3つに分けられます。
・必要書類を準備する
・申告書類を作成する
・申告書類を提出する
ここでは、それぞれの内容について、説明していきます。
FXの確定申告で必要な書類
FXの確定申告で提出する書類は、以下の3点です。
・先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
・確定申告書B(第一表・第二表)
・申告書第三表(分離課税用)
なお、損失が出た際に確定申告を行う場合は、「所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」も必要です。
申告の際には、以下の書類も添付します。
・給与所得の源泉徴収票
・年間損益報告書(年間取引報告書)
「給与所得の源泉徴収票」は、勤務先からもらえます。
「年間損益報告書」は、取引に使っているFX会社のサイトでダウンロードが可能です。
FXの確定申告書類の書き方
FXの確定申告書類の作成手順は、以下のとおりです。
1. 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を作成する
2. 確定申告書B 第一表の左側を記入する
3. 確定申告書B 第二表を作成する
4. 申告書第三表(分離課税用)を作成する
5. 確定申告書B 第一表の右側を記入する
ここでは、それぞれの書き方について説明していきます。
①先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を作成する
画像出典:国税庁「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」
上記の記載例を参考に、実際の金額等を記入していきます。
1番上の「種類」の欄には、「外国為替取引」と記入しましょう。
「総収入金額」は、FX会社の年間損益報告書に記載されている金額を記入。
「必要経費等」には、経費の内訳と金額、合計金額を記入します。
最後に、1番下の「所得金額」の欄に、総収入金額から必要経費等を引いた金額を記入して、この書類の作成は完了です。
②確定申告書B 第一表の左側を記入する
画像出典:国税庁「申告書B【令和2年分以降用】」
源泉徴収票をもとに、第一表の左側の、以下3つの箇所を記入します。
・収入金額等
・所得金額等
・所得から差し引かれる金額
ここでの「収入金額等」や「所得金額等」には、FXの収入や所得は記入しません。
FX以外の収入が給与だけの場合は、給与の金額(画像の青枠部分)のみを記入しましょう。
「所得から差し引かれる金額」には、源泉徴収票に記載のある各種所得控除と、「基礎控除」の欄に金額を記入していきます。
基礎控除の金額は、年間の合計所得金額が2,400万円以下なら「48万円」です。
③確定申告書B 第二表を作成する
画像出典:国税庁「申告書の記載例」
第二表には、主に「所得の内訳」や「所得から差し引かれる金額に関する事項」について、記入していきます。
上記の記載例と源泉徴収票を参考に、記入しましょう。
記載する事項がない箇所は、空欄で問題ありません。
④申告書第三表(分離課税用)を作成する
画像出典:国税庁「申告書第三表(分離課税用)【令和2年分以降用】」
第三表では、上記の画像の赤枠の部分を埋めていきます。
他の書類を参考にする箇所も多いので、手元に用意しておきましょう。
収入金額の「先物取引(ナ)」には、最初に作成した「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の「総収入金額(4)」を記入。
所得金額の「先物取引(72)」には、同表の「所得金額(12)」を記入します。
次に、「税金の計算」です。
(12)には申告書B 第一表の(12)を、(29)には同表の(29)と同じ金額を記入。
(75)には、(12)から(29)を引いた金額を記入します(1,000円未満は切り捨て)。
(80)には、第三表の(72)と同じ金額を記入(1,000円未満は切り捨て)。
(83)には、(75)の所得金額にかかる所得税額を記入します。
所得税額は、所得金額に以下の税率を掛け、控除額を引いたものです。
画像出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
例えば、(75)の所得金額が300万円の場合は、「300万円×10%-97,500円」で、所得税額は20万2,500円になります。
(88)には、FXの所得金額に対する所得税額を記入します。
FXの所得税率は一律15%なので、「(80)の金額×0.15」の金額を記入すればOKです。
最後に、(91)に、(83)と(88)の合計額を記入して、この書類の作成は完了です。
⑤確定申告書B 第一表の右側を記入する
画像出典:国税庁「申告書B(第一表・第二表)」
上記画像の赤枠の部分に、それぞれ以下の金額を入れていきましょう。
・(31)(41)(43)…申告書第三表の(91)を記入
・(44)…「(43)×2.1%」の金額を記入
・(45)…「(43)+(44)」の金額を記入
・(48)…源泉徴収税額を記入
・(49)…「(45)-(48)」を記入
・(51)…「(45)-(48)」を記入(100円未満切り捨て)
以上で、FXでの確定申告に必要な書類の作成は完了です。
FXの確定申告書の出し方
確定申告書の提出方法は、以下3種類あります。
1、税務署に直接提出
2、税務署に郵送
3、e-Taxで申告
直接提出や郵送は、住所地を管轄する税務署に対して行います。
管轄税務署は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」から検索できます。
「e-Tax(イータックス)」は、インターネットを利用して、税金に関する手続きができるシステムです。
書類に直接記入しなくても、画面の指示に従って金額等を入力することで、電子申告ができます。
e-Taxの電子申告には、以下2種類の方式があります。
1、 ID・パスワード方式
2、マイナンバーカード方式
「ID・パスワード方式」は、税務署に出向いて、IDとパスワードを発行してもらい、それらを利用して申告する方式。
「マイナンバーカード方式」は、マイナンバーカードを利用した方式です。
マイナンバーカードと、カード情報を読み込む「ICカードリーダライタ」があれば、IDやパスワードを発行してもらわなくても、e-Taxで電子申告ができます。
FXの損失は確定申告の際にどうなるのか?
FXの収支がマイナスになった場合も、確定申告をしておけば、「損益通算」と「繰越控除」ができます。
損益通算とは、損失額を他の所得から差し引くことです。
損失額を差し引けるぶん、トータルの所得金額が低くなるため、納める所得税額も低くできます。
FXの損失は、給与所得などとは損益通算ができませんが、主に以下の所得とは損益通算が可能です。
・ 株の先物取引
・株のオプション取引
・商品先物取引
また、上記の所得と損益通算しても、トータルの収支がマイナスになる場合は、3年間の繰越控除ができます。
繰越控除とは、以下の例のように、翌年以降に損失を繰り越し、翌年以降の利益の額から控除できる制度です。
当年の利益 | 当年の損失 | 前年までの損失 | トータル損益 | |
2020年 | 0円 | -100万円 | 0円 | -100万円 |
2021年 | 30万円 | 0円 | -100万円 | -70万円 |
2022年 | 30万円 | 0円 | -70万円 | -40万円 |
2023年 | 30万円 | 0円 | -40万円 | -10万円 |
※トータル損益=当年の利益-当年の損失or前年までの損失
この例の場合、繰越控除によって、翌年から3年間のトータル損益をマイナスにできるため、翌年以後3年間にわたって、FXの所得に税金はかかりません。
FXの確定申告はサラリーマンも必要?個人事業主だけ?
サラリーマンでも、給与所得や退職所得以外の所得金額が20万円を超えている場合は、確定申告が必要です。
そのため、FXの所得金額が20万円超なら、確定申告をしなければなりません。
FXの確定申告についてまとめ
FXで年間20万円を超える所得がある人は、確定申告が必要です。
確定申告は手間がかかる作業ですが、申告を怠ると、追加で税金が課されてしまいます。
FXの確定申告はそう難しくはありませんし、FXトレーダーにとって必須です。
これからFXを始める方や、始めたばかりだという方は、ぜひこの記事を参考にして、確定申告ができるようになりましょう。