「バランス型ファンドはリスクを分散しているから初心者向きである」
こうした主張をよく見かけますが、本当に正しいのでしょうか?
確かにバランス型ファンドは様々な投資先に分散できる銘柄であり、個別株投資よりもリスクヘッジは期待できるでしょう。
しかしバランス型ファンドにもリスクがあり、初心者向きとは言い切れない側面があります。
今回はバランス型ファンドのリスクやデメリットを解説します。
最後まで読めば、投資初心者が自分に合った運用方法を探すヒントを得られるでしょう。
バランス型ファンドとは?特徴を紹介
バランス型ファンドとは、国内外の株式・国債・REIT・コモディティなど、様々な投資先に分散投資する投資信託です。
投資信託の中でも低リスクで安心感のある商品とされており、「投資初心者に向いている」としてよく紹介されています。
バランス型ファンドの特徴は「株式40%・国債40%・REIT20%」のように投資先の種類と配分があらかじめ決められている点であり、投資家は金融機関が用意した種類・配分の組み合わせの中から、自分にあった商品を選ぶことが可能です。
バランス型ファンドが初心者におすすめしない理由・デメリット
「バランス型ファンドはリスクが低く、投資初心者に適している」と様々なところで紹介されていますが、初心者向きとは言えない側面もあります。
初心者向きではない理由・デメリットは次の3つです。
- 管理・運用を金融機関側に任せるため自由度が低い
- 手数料が高くなる
- 値動きが安定しないケースもある
それぞれ解説しますので、これからバランス型ファンドに投資を検討している方は、事前に押さえておきましょう。
1.管理・運用を金融機関側に任せるため自由度が低い
バランス型ファンドを含め、投資信託は管理・運用を金融機関側に任せるため、投資家の裁量で運用できません。
管理・運用を自分でしなくて良い点は、初心者にとってメリットとも言えますが、バランス型ファンドの購入後に投資方針を変えたいと思っても、自由に運用方法を変えられないのです。
「投資先の配分を変えたい」「やっぱりトレンドの銘柄を買い足したい」といった臨機応変な投資はできないので、学びながら実践するスタンスで投資をしたい方は、他の金融商品をおすすめします。
2.手数料が高くなる
バランス型ファンドの中には手数料が高めに設定されている銘柄もあります。
運用・管理を金融機関にお任せして放っておけるタイプの商品なので、その分だけ維持コストが高くなります。
具体的には、シンプルなインデックスファンドは信託報酬が0.1%を切る銘柄がある一方、バランス型ファンドだと安くても0.15%、高いと0.5%以上です。
信託報酬とは投資信託の運用にかかる年間手数料のことであり、信託報酬の割合が低くなるほど、運用コストを抑えられます。
このようにバランス型ファンドは他の投資商品と比べると、長期運用において不利になるので注意が必要です。
3.値動きが安定しないケースもある
バランス型ファンドの値動きが安定しないケースも考えられます。
バランス型ファンドは株式や債券など様々な投資先に分散投資し、価格変動リスクを抑えることを狙っていますが、株式市場下落の影響を大きく受けて、銘柄も大きく値下がりしてしまう可能性もあるのです。
一般的に株式の価値が下がれば債券の価値は上がりますが、株式市場の下落率が高いと、債券価値の上昇率で銘柄全体の値下がりを抑えきれないことがあります。
そのため、「バランス型ファンドで分散投資しているから、株が暴落しても安心」とは言い切れません。
バランス型ファンドのメリット
初心者におすすめしにくいバランス型ファンドですが、次のようなメリットがあるのも事実です。
- 分散投資が簡単にできる
- リバランスしてもらえて管理が楽
- 投資知識が浅くても始められる
これらのメリットを見てみましょう。
1.分散投資が簡単にできる
バランス型ファンドでは分散投資が簡単にできるため、価格変動リスクを抑えられます。
ひとつのバランス型ファンドを買うだけで株式・国債・REIT・コモディティなど複数の金融商品に投資できるため、投資先のいずれかが下落しても、損失を防げるのです。
価格の暴落に備えて複数銘柄へ投資するのは常套手段ですが、自分で銘柄を選ぶのは大変ですし、さらに国外まで視野を広げるにはリサーチスキルや判断力が欠かせません。
バランス型ファンドであれば、気軽に分散投資することができます。
ただし上記の通り、株式市場の暴落の影響を大きく受け、価格変動による元本割れのリスクがある点にも注意しましょう。
2.リバランスしてもらえて管理が楽
バランス型ファンドなら、金融機関側でリバランスをしてくれます。
リバランスとは、投資対象の価格変動を見ながら保有する金融商品の比率を変えていく作業であり、ポートフォリオを安定させるために行います。
リバランスする際は投資銘柄の値動きをチェックし、当初の投資配分から外れないよう日々コントロールしなければならないので、手間がかかるでしょう。
バランス型ファンドを購入すると、リバランスを任せられるメリットがあるのです。
3.投資知識が浅くても始められる
投資に関する知識が浅くても、バランス型ファンドを利用すれば投資を始められます。
バランス型ファンドは金融機関に運用を任せられる商品であり、銘柄の選定と購入をした後は基本的にやるべきことはありません。
ただし定期的に値動きを見て、大きく損失を出していないかどうかチェックする必要はあるでしょう。
「投資を学ぶ時間はまだあまり取れないけど、資産運用をしてみたい」という方にはバランス型ファンドから始めてみるのもおすすめです。
もちろん投資を始める前に、元本割れのリスクや投資配分の確認をしておくのが大切になります。
バランス型ファンドが向いている方
バランス型ファンドは下記のような方に向いています。
- 忙しく投資に時間をかけたくない方
- 価格変動リスクを取れる方
まず、「忙しいけど投資で資産を増やしたい」という方にはバランス型ファンドが向いています。
運用・管理をすべて金融機関に任せられるため、投資に関する勉強に時間をかける必要がなく、仕事や他の勉強に集中できます。
そして「価格変動リスクを取れる方」にもおすすめです。
バランス型ファンドは分散投資によりリスクヘッジをしている商品ですが、当然元本割れのリスクがあります。
そのため、含み損を抱えるリスクを負ってリターンを狙いたい方には向いています。
バランス型ファンドが向いていない方
次のような方には、バランス型ファンドが向いていません。
- 値動きが気になって放っておけない
- 大きなリターンを狙いたい
- 投資のスキルアップを考えている
まず、「値動きが気になって放っておけない」という方とは相性がよくありません。
もし「お金を1円でも失いたくない!」と考えていて値動きが気になる場合、元本が保証されているローリスク・ローリターンな国債に投資するのが良いでしょう。
次に「大きなリターンを狙いたい」と考えている方にもおすすめできません。
バランス型ファンドは複数の投資先に資産を分けて投資するので、それぞれの投資先に対する資産配分は小さくなりがち。
そのため大きなリターンを狙いにくくなります。
リターンを重視するなら、投資信託ではなく個別株投資やFXに挑戦するのが良いでしょう。
個別株であれば、ひと月で10%以上動く銘柄も存在するので、バランス型ファンドよりも大きな利益を期待できます。
またFXであれば、証拠金を預けてレバレッジをかけた取引が可能ですので、少ない資金で大きな金額を動かせます。
最後に、「投資のスキルアップを考えている」方にもバランス型ファンドは向いていません。
バランス型ファンドは金融機関に運用を任せるタイプの商品です。
投資家の裁量で運用することはできないため、投資の経験を積みにくい欠点があります。
もちろん、チャートの動きを見たり経済ニュースを参考にしたりして銘柄の売買をするのは可能ですが、「この株式だけを購入・売却したい」といったフレキシブルな運用はできません。
したがって投資のスキル向上を考えている方は、投資信託ではなく自分で株式などを運用するのをおすすめします。
バランス型ファンドについてよくある質問
バランス型ファンドについてよくある質問をまとめました。
- 積立NISAでバランス型ファンドを買うのはお得?
- iDeCo(個人型確定拠出年金)でバランス型ファンドを買うデメリットは?
- どんなバランス型ファンドがおすすめ?
それぞれの質問にお答えします。
積立NISAでバランス型ファンドを買うのはお得?
積立NISA(少額投資非課税制度)を利用してバランス型ファンドを購入する方法もあります。
投資で得られる利益の非課税期間は20年間であれば続くため、投資方法の選択肢の1つとして有効でしょう。
ただし積立NISAは年間40万円分までしか非課税対象とならず、限度額までバランス型ファンドで運用しても期待する利益を狙えない可能性があります。
そのため非課税の恩恵も決して大きくならない点に注意しましょう。
とはいえ積立NISAで取り扱える銘柄自体、安定性を重視した銘柄が多いので、そもそも「短期間で大きなリターンを狙いたい」と考えている方には不向きです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)でバランス型ファンドを買うデメリットは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)もバランス型ファンドを購入する際の1つの選択肢としては有りでしょう。
積み立てNISAよりも選択の幅は広いため、より大きなリターンを狙うための投資も可能ですし、運用益は非課税です。
ただしiDeCoにも年間の投資限度額があり、会社員の場合は月額1万2000円から2万3000円の間でしか運用できません。
したがって積立NISA同様、バランス型ファンドの利益に対する非課税効果は高くないと言えます。
加えてiDeCoの場合、利益含めて掛け金を自由に引き出せず、60歳になるまで手元に戻せない点にも注意しましょう。
どんなバランス型ファンドがおすすめ?
複数の金融商品を組み入れるバランス型ファンドは投資配分にバリエーションがあり、運用途中からの変更はできません。
そのため、自分にあった投資配分のバランス型ファンドを見つけるのが大切です。
資金に余裕があり、ある程度のリスクを許容できるなら、株式の割合が高くリターンを狙いやすい商品をおすすめします。
反対に、値動きに振り回されたくないなら、債券を多く組み入れた商品を選べば低リスクで運用できます。
バランス型ファンドの購入前に、必ず投資配分に目を通して商品を選ぶようにしましょう。
まとめ
今回はバランス型ファンドについて解説しました。
「初心者向きの投資方法」として紹介されることの多いバランス型ファンドですが、投資する前に注意すべきリスクやデメリットも存在するので、必ずしも「初心者全員に向いている手法」であるとは言えません。
今回ご紹介したリスクやデメリットを押さえた上で、自分に合った運用方法を見つけてみましょう。
本稿は2022年2月時点での情報をもとに作成されています。
また、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係ありません。また、わかりやすさを優先して解説していますので、細部は必ずしも厳密とは限りません。